いつの日か、「日本遺産」にふさわしい尾道が来ると信じて
ー尾道市の迷走ー
■平成25年6月14日の閣議決定
安倍政権下の日本政府は「経済財政運営と改革の基本方針〜脱デフレ・経済再生〜」において「インフラの老朽化が急速に進展する中、『新しく造ること』から『賢く使うこと』への重点化が課題である。」ことを閣議決定した。これを受けて同年11月には「インフラ長寿命化基本計画」を策定している。
■第1回尾道市庁舎整備検討委員会の議事録(H25年7月)
尾道市が任命した構成メンバーは15名。うち建築の専門家は市外から免震工法の荒木秀夫氏(広島工業大学教授)と公益社団法人広島県建築士会会長の錦織亮雄氏の2名、あとの13名は尾道市内の有識者と各種団体の代表者で、唯一尾道市建築審査会会長の中山昭夫氏の1名だけが鉄骨構造の専門家で、そのほかの方々は建築の知識はない。検討資料では、市庁舎本館と増築棟の耐震診断(Is値)とコンクリートの圧縮強度と中性化深さが発表されている。これによると本館そのものは耐震改修すれば問題なく、増築棟部分は解体すべきであることがわかる。
■第2回尾道市庁舎整備検討委員会の議事録(H25年8月)
配布資料に「耐震改修」と「新築」との工事費比較を掲載。それによると、海辺における免震工法は、南海トラフで想定される高潮に極めて高いリスクがあるにもかかわらず、そのことを全く議論をしていないばかりか、免震工法を全面的に採用することを前提としている。市庁舎本館と解体すべき増築棟のいずれも高価で特殊な免震工法と現実には考えられない多くの耐震壁を使用し、一坪(3.3u)当り耐震改修費を183万円〜212万円とし、新築工事費の一坪(3.3u)当り約156万円を大幅に超える金額を提示し、新築を誘導している。すでにこの時点で、各委員の多くは市庁舎新築に賛同。平谷尾道市長は、市民に向け「合併特例債は補助金のようなもの」「新庁舎は安心安全な防災拠点」と事実誤認をさせる発言を繰りかえす。
■第3回尾道市庁舎整備検討委員会の議事録(H25年10月)
議事録にある事務局の説明からも、新築案を誘導しながら、耐震性能の調査をせず公会堂を解体した跡地に市庁舎新築をすることを当初より決めていたことが伺える。経済同友会尾道支部代表の委員ほか複数の委員から異論。ここでコンクリートの専門家でもない中山委員からコンクリートの耐震改修が30〜40年も持たないという誤った情報を各委員に伝える。委員会で公会堂を解体した跡に市庁舎を新築する案の是非を採決している。賛成11名、以外の場所2名、広島県建築士会会長の錦織氏は「判断できる材料ないので挙手しない」と棄権。過半数が公会堂を解体し、跡地に市庁舎新築をすることに賛成。委員会として、その方向で進行することを明言。
■市庁舎整備検討委員会が意見書(H26年2月)
尾道市庁舎整備検討委員会が尾道市長に「尾道市庁舎の整備方針について」(意見書)を提出。尾道市のすすめる新築案を予定通り追認。尾道市庁舎の整備方針について(意見書)
■日本建築学会中国支部が平谷市長に要望書(H27年2月)
「尾道市庁舎本館と公会堂の保存・活用に関する要望書」を提出。その内容は、建築家・増田友也の設計した市庁舎本館と公会堂尾道の歴史と文化を象徴する記念碑の一つとして、後世に伝え、残すべき文化的・歴史的価値を有すると認められるので、「是非、本館棟と公会堂の存続と、そのことを前提とした活用計画を御検討いただくと共に、かけがえのない文化遺産の価値を考慮した改修を行っていただけますよう、格別の御配慮を賜りたくお願い申し上げる次第です。なお、日本建築学会中国支部としましては、尾道市庁舎と公会堂の存続に関して、出来うる限りの御協力をさせていただく所存であることを申し添えます。」この要望書を平谷尾道市長は無視した。
■広報おのみち4月号で誤った情報掲載(H26年4月)
広報おのみちを使い、「耐震改修を行っても耐用年数は伸びない」と誤った情報を作為的に市民に流す。
野口貴文東京大学教授(当時は准教授)をはじめとして専門家の間では「耐震補修で耐用年数は伸びる」というのが定説。また尾道市は「耐震改修をしてもすぐまたメンテナンス(補修)が必要となる」が「新築すればメンテナンスは当分必要ない」「だから耐震改修は二重投資となる」と。
しかしながら、実際の耐震改修では、耐震性能を高めると共に鉄筋コンクリートの劣化を修復し、新築と同等の性能を獲得する。メンテナンスは新築とほぼ同じ条件であり、耐震改修が二重投資になることはない。
ここで面白い尾道市副市長の反論をご紹介する。それは、安倍政権下で閣議決定された公共建築物の長寿命化計画に呼応し、WEBに載せた委員会での研究成果「耐震補修で耐用年数は伸びる」について、それは一学者のいう説だと吾輩に全面否定したことだ。これには吾輩も大いに驚き、呆れかえって言葉もなかった。
野口貴文東京大学教授(当時は准教授)をはじめとして専門家の間では「耐震補修で耐用年数は伸びる」というのが定説。また尾道市は「耐震改修をしてもすぐまたメンテナンス(補修)が必要となる」が「新築すればメンテナンスは当分必要ない」「だから耐震改修は二重投資となる」と。
しかしながら、実際の耐震改修では、耐震性能を高めると共に鉄筋コンクリートの劣化を修復し、新築と同等の性能を獲得する。メンテナンスは新築とほぼ同じ条件であり、耐震改修が二重投資になることはない。
ここで面白い尾道市副市長の反論をご紹介する。それは、安倍政権下で閣議決定された公共建築物の長寿命化計画に呼応し、WEBに載せた委員会での研究成果「耐震補修で耐用年数は伸びる」について、それは一学者のいう説だと吾輩に全面否定したことだ。これには吾輩も大いに驚き、呆れかえって言葉もなかった。
■広報おのみち3月号で誤った情報掲載(H27年3月)
広報おのみち3月号で、平成25年度の市内6ホール中で52.4%と一番使用率が高かった公会堂(尾道市文化施設課調べ)について、「低い利用状況」と作為的に誤った広報を行い、「耐震改修では、築後54年の現庁舎(本館と増築棟)に33〜40億円程度が必要(専門業者2社による試算)、耐震壁等により部屋が分断され非常に使いにくい状況(住民サービスの低下)」と、常識では考えられない高額な工事費と使用もしない耐震壁等(現状はバットレスで十分)を強調し、市民に誤った情報を流す
■強引な日建設計との本契約
平成27年4月15日 市議会で保守系市会議員が「4月26日の市長選挙の争点は、新築か耐震改修か。現職の市長が落選すると、新築計画が白紙になる。その結果、違約金を支払わなければならないリスクがある。たった2週間先延ばしするだけで、尾道市は数千万円の違約金支払のリスクが回避できる」と主張。しかし、尾道市がそれを無視し、2週間後の選挙日を待たずに日建設計と本契約を締結。
■三つ巴の市長選挙
平成27年4月26日 尾道市長選挙で「市庁舎の耐震改修」を掲げる吉井、後藤両氏の候補と新築を進める現職平谷氏との三つ巴選挙。結果は現職平谷氏が35,425票、吉井氏が33,575票、後藤氏が5,800票となり、現職の平谷候補の当選が確定した。しかし、新築反対派の候補2名の得票数は39,375票となり、新築反対の票が新築の票より3,950票多かったとも読める。
■反新築派の議員と市民の初会合
平成27年6月20日 市庁舎新築に反対する市議会議員6名と市民が初会合。同年9月、市庁舎新築に反対する6つの団体と個人で構成する共通の事務局「尾道市民のプラットフォーム」を結成、住民投票を実現するための署名運動を組織的に開始。署名期間10月20日〜11月20日
■隠蔽された液状化問題
尾道市は平成26年度事業の市庁舎新築予定の「地盤が液状化の可能性がある」との地質調査の結果報告を7ケ月間隠蔽し、10月の市議会予算委員会での議員の追求で初めて公表する。
■市民を惑わすマスコミ報道-山陽日日新聞社の記事
2015年10月21日付けの尾道市が発表したという新聞報道(山陽日日新聞社)記事では、「市庁舎本館棟と公会堂は、建物を支える土中に打ち込んだ杭が強固な基盤まで届いてなく、震度6強の地震にみまわれた場合には、地盤は液状化し、建物は傾き、最悪、倒壊の怖れもある」と報じ、「液状化」には新築する以外に対応できないという間違った情報を流した。その理由については、杭打ちの工法を説明した前述の「信じ得られない広報おのみち(H27年11月号)」を再読いただきたい。
■市民を惑わすマスコミ報道-びんご経済レポート(備後レポート社発行)「こぼれ話」
平成27年11月1日の経済レポート「こぼれ話」で『市庁舎も公会堂も杭が支持地盤に到達していないことが判明した。さすがにこれには「補強修理で使った方がいい」と考えていた人たちにも断念させる説得力があり、新たな署名活動のハードルになっている。』と。これはデマ以外のなにものでもない。
問題は、横浜のマンションの杭打ち不足問題と市庁舎本館並びに公会堂の杭打ちの深さの問題とを同一視していること。さらに、耐震改修案も新築案も地盤の液状化そのものを防止する工事をしなければ、強固な地盤に届く杭でも解決できないという事実を知らないのか、あるいは知っていて隠しているのか。
問題は、横浜のマンションの杭打ち不足問題と市庁舎本館並びに公会堂の杭打ちの深さの問題とを同一視していること。さらに、耐震改修案も新築案も地盤の液状化そのものを防止する工事をしなければ、強固な地盤に届く杭でも解決できないという事実を知らないのか、あるいは知っていて隠しているのか。
■信じ得られない広報おのみち(H27年11月号)
驚くべき記事が広報おのみち平成27年11月号に以下の通り掲載されている。
「市庁舎本館と増築棟の手すりが最大で3.5cmずれています。本館棟や公会堂は、50年以上前の工法で建てられているため、建物を支える杭は強固な地盤に届いていません。新庁舎では、強固な地盤まで杭を設置することで、安全安心な建物にすることができます。」これを読んだ市民はどう感じるだろうか。
巧妙なトリックで人を騙す手口に似ている。市民のために存在すべき行政がこんな手口で市民を惑わせるとは、許されることではない。なぜか。その答えをお教えしよう。
確かに市庁舎本館と公会堂は50年以上前に建てられ、当時の技術に沿って杭を打っている。例えば、市庁舎本館は、昭和35年4月5日付「尾道市政だより」によれば、杭の数に応じた十分な支持層に長さ12mの杭を422本、長さ10mの杭を15本の合計437本の杭を打ち込み、半世紀を過ぎても杭は本館棟を支え沈下していない。一方、増築棟は技術が進歩し、25mの深さの支持層に12本の杭を打ち込んで本館棟の二分の一の重さを支えている。これは技術的進歩により、深い支持層までより太い杭打ちが可能となったことで、驚異的に杭の本数を減少させることで経済的コストの大幅な削減が可能となったことによる。両者はそういう意味で、工法の違いがあるものの、安全性には差はない。以上のことから、尾道市の言う「本館棟や公会堂の杭が強固な地盤に届いていない」という表現は市民を惑わす誤った記述である。
さらに問題なのは、掲載された手すりの写真だ。これは、海に向かって撮られたもので、写真左が本館棟、右が増築棟だとわかる。この写真は何を物語っているのか、お解りになるだろう。
尾道市がいう深い強固な地盤に打ち込まれた杭で支えられている増築棟が3.5cm沈下しているということになる。仮にそうでないとしたら、本館棟が浮き上がったということになるが、それはあり得ないことだ。
尾道市が主張する「固い地盤に到達していない杭で支えられた本館棟が沈下する」のではなく、現実は増築棟が沈下しているのだ。写真は、明確にそのことを示している。尾道市がこれだけのことを広報に載せるからには、この本館と増築棟の沈下の逆転を明確なデータで説明しなくてはならない。それができないとすれば、今の尾道市はデータに基づかない作為的な論評を市民に公表していることになる。
「市庁舎本館と増築棟の手すりが最大で3.5cmずれています。本館棟や公会堂は、50年以上前の工法で建てられているため、建物を支える杭は強固な地盤に届いていません。新庁舎では、強固な地盤まで杭を設置することで、安全安心な建物にすることができます。」これを読んだ市民はどう感じるだろうか。
巧妙なトリックで人を騙す手口に似ている。市民のために存在すべき行政がこんな手口で市民を惑わせるとは、許されることではない。なぜか。その答えをお教えしよう。
確かに市庁舎本館と公会堂は50年以上前に建てられ、当時の技術に沿って杭を打っている。例えば、市庁舎本館は、昭和35年4月5日付「尾道市政だより」によれば、杭の数に応じた十分な支持層に長さ12mの杭を422本、長さ10mの杭を15本の合計437本の杭を打ち込み、半世紀を過ぎても杭は本館棟を支え沈下していない。一方、増築棟は技術が進歩し、25mの深さの支持層に12本の杭を打ち込んで本館棟の二分の一の重さを支えている。これは技術的進歩により、深い支持層までより太い杭打ちが可能となったことで、驚異的に杭の本数を減少させることで経済的コストの大幅な削減が可能となったことによる。両者はそういう意味で、工法の違いがあるものの、安全性には差はない。以上のことから、尾道市の言う「本館棟や公会堂の杭が強固な地盤に届いていない」という表現は市民を惑わす誤った記述である。
さらに問題なのは、掲載された手すりの写真だ。これは、海に向かって撮られたもので、写真左が本館棟、右が増築棟だとわかる。この写真は何を物語っているのか、お解りになるだろう。
尾道市がいう深い強固な地盤に打ち込まれた杭で支えられている増築棟が3.5cm沈下しているということになる。仮にそうでないとしたら、本館棟が浮き上がったということになるが、それはあり得ないことだ。
尾道市が主張する「固い地盤に到達していない杭で支えられた本館棟が沈下する」のではなく、現実は増築棟が沈下しているのだ。写真は、明確にそのことを示している。尾道市がこれだけのことを広報に載せるからには、この本館と増築棟の沈下の逆転を明確なデータで説明しなくてはならない。それができないとすれば、今の尾道市はデータに基づかない作為的な論評を市民に公表していることになる。
■最近の平谷祐宏尾道市長発言
平谷尾道市長は、合併特例債について「国が7割負担してくれる、補助金のようなもの」から、ここに来て「有利な借金」と説明をシフトされた。そして、住民投票条例の制定を求める署名運動期間に入り、精力的に各種団体の会合や地区別の集会を設営し、お得意のパワーポイントで、南海トラフ巨大地震を想定した津波がくる海辺に、免震構造の新築する市庁舎を未だに「安心安全な防災拠点」とアピールされていると聞く。さらに液状化問題では「新庁舎は日本一の日建設計が設計するから安心」「新庁舎は地下28mの強固な地盤に杭を打つので心配いらない」と説明。ここでも市民に対し、新築案でも液状化対策をしなければいけないこと、そのため70億円の建築費がさらに増大するという事実を封印されている。市長のいう防災拠点であるはずの新市庁舎が、南海トラフの大地震で運良く建物だけが残ったとしても、液状化によりライフラインや周辺の道路が寸断され、新市庁舎に周辺アクセスできなくなる可能性が極めて大きいことは想定される。それをを今の新築計画では想定していないところに、大きな問題がある。行政は想定できる最大限のことに対応できるよう計画するものだ。新市庁舎は防災拠点ではあり得ない。